思考法

鋼の意志と行動だけが自分を変える

■自分とは、自分だと思考しているだけの偽物が作ったもの

 
『あなたは、あなたが使っている言葉でできている』は、いわゆる「ポジティブ・シンキング」の本ではない。また「アファーメーション」の本でもない。

本書の前半は言語が感情にどのように影響し、それを用いることで能力を引き出し、成功へ至るための信念を強化するための方法論であり、後半は行動することの意味について記されている。本書を学べば、普段「自分」だと思っているもののほぼすべてが無意識(的な思考)による支配であることに気づく。読者はそこに自由意志の矮小さを知ってがく然とするとともに、自分を支配し、常に悲劇的で問題だらけの状況に縛り付けようとする思考を乗り越える方法について学び、目を瞠ることになるだろう。

なお本書では、とくに効果があるだろう対象として「人生に行き詰まったり、再出発の必要を感じたりした人」と述べている。なぜなら新たなる出発点となるためである。
 
 

■最初に心に刻むべきこと

 

1 人は常に自分と会話している

 
人は誰しも2種類の会話をしている。1つは他人との会話、もう1つは自分との会話。そして自分の1番の話相手とは自分自身なのだ。

人間の頭には一日に5万以上もの考えが浮かぶ何かに挑戦しようとしているのに「ダメなんじゃないか」「できないんじゃないか」「どうせ自分なんて」と常に自滅的な声がしている。そのような不安の波に呑まれて人は次第にダメになってゆく。
 
 

2 自分にどんな言葉をかけるかで人生が変わる

 
自分とポジティブな会話をすることはとても大事だ。

アラバマ大学のウィル・ハート教授は被験者に楽しかった出来事、つらい出来事、どちらでもない出来事を思い出してもらった。そのことを語ると楽しい出来事は今それが楽しいかのように、つらい出来事はもっとつらい出来事かのように、中間的な出来事は楽しい思い出のように語っているのがわかった。

ただし、今すぐポジティブ思考を持てとか、自分を愛せというのはむりな話だ。
 
 

3 ネガティブな言葉がネガティブな感情を呼ぶ

 
現代心理学の父であるアルバート・エリスは、思考と感情は密接に結びついており、切っても切れない関係にあると述べている。

そして人間は常に不安に苛まれている。この内面から湧き起こるネガティブな言葉は、怒りや悲しみなどと言った負の感情の呼び水となる。
 
 

4 自分にとっての現実は、自分の頭で作り出せる

 
問題をどうとらえ、表現するかで人生は変わる。

「人生は不公平だ」と不平を言いながら生きていけば、それに見合った行動を取るようになる。逆に「成功はどこにでも転がっている」という見方であれば日々を活き活きと過ごすことができる。

ローマ皇帝の一人であり、ストア派の哲学者であるマルクス・アウレリウスは「大切なのはつらいときに『なんて不幸なのだ』と思うのではなく、『がんばる機会が得られて運がいい』と思うことだ」と言っている。

状況が絶望的であったとしても、そこに答えを見つける必要などない。なぜなら答えとは自分自身なのだ。

人生のあり方とは、自分との対話次第なのである。
 
 

5 脳を鍛え直す

 
思考によって脳の物理的な構造は変わる。学んだことによって神経の通り道を変えてゆくのだ。これを神経可塑性と言う。意識的ではっきりしたセルフトークを行うことで、これを組み替えることができる。

これによって思考をコントールできれば、感情をコントロールできると述べた。そして思考をコントロールするには、使う言葉を意識することだ。そのためにまず行うべきは、自分のためにならない喋り方を改めることである。これによってたとえ今の状況がどれほどつらく、厳しくものでも、それをどうとらえ、向き合うかで結果は変わる。
 
 

6 セルフトークをアサーティブ(主張型)にする

 
セルフトークは会話ではなく、主張にする。「~する予定(するつもり)」「~すべき、~したい」などという言葉を用いると、無意識は「それなら今やらなくてもいいか」と思う。

たとえば貯金がしたいが、服が欲しい。ダイエットしたいが、好きなものを食べたい。最初の決意が消え、元の思考パターンに戻ってきたときに自分に言うべき言葉がある。

「自分は~だ」「~を歓迎する」「受け入れる」「主張する」と言った断定的な言葉を用いる。
 
 

■私には意志がある

 

1 人生を変えられないことを言い訳にしない

 
どんな絶望的な状況でも、状況を言い訳にしているのは現状を肯定しているのと同じことだ。ギリシャの哲学者のエピクテトスは、人の真価は状況ではなく、対応で決まると述べている。

どんな状況でもできることは必ずある。意志とは、今とは別の視点で人生を歩み、状況に向き合う姿勢のことだ。
 
 

2 「やるぞ」という意志を持つ

 
状況が悲嘆的であれば誰でも変えたいとは思うだろう。そして意志はあるかと自分に問えば「やる意志はあるけど、でも……」と思ってしまう。だが「でも」を最後につけるたびに自分は被害者になってゆく。

意志とは覚悟の姿勢のことだ。ローマの哲学者セネカは「運命は意志ある者を導き、ためらう者を引きずっていく」と言う。

だから最初に覚えるアサーティブな言葉は「私には意志がある」だ。
 
 

3 ネガティブな言葉も使いよう

 
否定の意志も使いようはある。不健康な生活を続ける意志があるか? 自堕落な日々を送り続ける意志があるか? 自分に問いかければ答えはノーだ。否定の意志は決心を作る。

そもそも、やるぞ、という意志はさほど長続きしない。人は現状維持を求めるからだ。もし現状維持を求めたのであればそれを認めてもいい。不満足な状況に身を置いているのが自分の意志だとわかっているのであれば、本格的な変化を起こす原動力になる。

それは自分を正しく評価し、人生への新たな道のりを照らす光となる。
 
 

■思考は常に勝利を選ぶ

 

1 先入観という名のパターン

 
たとえ恋人にこっぴどい振られ方をしたとしても、それは子ども時代や育つ過程で無意識の奥底が選んだパターンなのだ。これは仕事にせよ、運動にせよ、すべてに当てはまる。人の思考はとても強力で常に目標を達成しようとするのだ。

人の行動の95%は無意識的なものだとブルース・リプトン博士は述べている。これはあらゆる分野にあてはまる。年収300万円と年収1000万円の人に違いはない。ただ、それぞれが無意識的にその金額が自分のなわばりであり、そこが無敵だと感じているだけだ。

「自分はこういうものだ」と無意識に決めている。これを先入観という。
 
 

2 自分の「勝ち」を振り返る

 
自分が勝っているものを想像する。それは自分が問題を抱え、苦戦している部分だ。人は自分自身に固定観念を抱いており、その人生観は、その人の現状と不気味なほど一致する。

とくに人の多くは自分の現状を両親のせいにしたがる。しかし彼らは、両親の失敗や悲惨な子ども時代のせいで大人になれなかったと「証明」したがっているに過ぎない。

どんなに自堕落でも、無能でも、貧しくても、人は自堕落や無能や貧しくなる行動を通じて生存し、ここまでたどり着いている。つまり、生き残る方法として勝ってきたのだ。この勝ち癖を正しい対象へ向けることだけで人は勝利を得られる。
 
 

3 勝ち癖を目標に向ける

 
「私は勝つ」という言葉はパワーである。しかし無計画では活用できない。
そのためには、

・自分を変えたいと思っている部分、問題ある部分を探す
・前者の目標をいくつかに分割する(ダイエットであれば食品を変えるや、運動をする、などだ)
・行動の途中や成功後の心構えも考える

 
 

■問題を乗り越えるには

 

1 誰の身にも同程度の問題が起きている

 
どんな人間にでも多かれ少なかれ問題が起こる。問題が小さくてもそれはいつも気になりいつしか拡大してゆくようになる。そういうときには問題の見方を変える。

どんな人間でも実は同じくらいの程度の悩みを抱えている。自分のように苦労していないと思ったとしても、他人の目に見える姿というのは表面上のものに過ぎない。しかし人は自分のこととなると常に裏側にばかり目を向ける。
 
 

2 一歩下がって全体を見る

 
絶望感や悲嘆に暮れたときは1歩でも2歩でも下がって人生の全体像を眺めてみることだ。自分の人生を目の前で左右に広がる線路にたとえる。右側は過去。線路の向こうには自分がこれまで旅してきたさまざまな事象が風景として映っている。嬉しかったことや悲しかったことを思い出してみよう。よく見ると、自分が今抱えている問題と似ていないだろうか。

左側は未来。これから先のすばらしい数々の経験。また苦しい経験や悲しい経験。さまざまなものがあるだろう。そうしてやがて終点にたどり着く。そう、人生の終わりだ。
 
 

3 舵を握る

 
全体像を眺めたら今向き合っている問題をもう一度じっくり確かめてみよう。自分の人生の船はまだ沈んではいない。どれほど辛い状況であっても、目前の問題の一つひとつに向き合い、粛々と取り組んでゆこう。たとえ解決策が見えないようであっても、解決策は必ずどこかに隠されている。見つからないときはもう一度ズームアウトして全体像を眺めてみることだ。
 
 

■未来は誰にもわからない

 

1 人は不安を恐れる

 
近代以前、人間にとって世界は野獣や天災だらけの危険な場所だった。だから人は本能的にリスクを回避したがり、確実なものを求める。だが、その執着心は今や悲劇であり、非生産的だ。なぜなら不確実さの中にはチャンスがあるためだ。慣れ親しんだものにしがみつき、同じことを繰り返すのは過去に生きているのと同義だ。

どんな成功者でも、才能のある人でもみんな毎日不安を抱えながら、それでも決断し危険を冒している。先が読めない状況でも、わからなくても前に進むことだ。
 
 

2 確実を求めない

 
確実という幻想を追い求めることは無意味だ。ソクラテスは「自分が何も知らないことを知っている」と述べた。これは無知を理解していたというより、ほとんど何もしらないという自覚を知恵のよりどころにしていたということだ。

人生は予測不可能で先が見えない。それを受け入れ、恐れないことだ。なぜなら安全だと思っているところにしがみついても、本当の安心は得られないからだ。
 
 

■自分とは思考ではなく、行動である

 

1 人間は思考ではない

 
「思考が変われば行動が変わる」というたわごとを信じている人間は多い。だが、本当に賢い者は、人間は思っていることとやることが一致するわけではないことを知っている。

やりたくない気持ち、いやな気持ちがあったとしても、偉大な人間は思考に引きずられずに行動することができる。端的にいえば、やるべきことに集中し、無理やりにでも行動しているということだ。なぜなら、どんなにがんばったところで人間はそもそもネガティブ思考になるようにできているからだ。だったら心が整うのを待っている時間、すぐに行動に移すことだ。
 
 

2 行動のメリット

 
行動のメリットは2種類。①行動は必要なものを達成する。②行動は思考を変える一番の近道になる。

恐怖・不安・怒りなどに支配されていればその人は前に進めない。一方、いやでもやるべきタスクに取り組んでいけば、それはやがてネガティブ思考から切り離されてゆく。その没頭状態を「ゾーン」と呼ぶ

思考は行動につながる。だが、行動を通じないと人生にならない。だからネガティブな考えが頭を席巻しようとしたときにはすぐに行動に移ることだ。準備ができていようがいまいが関係ない。行動に移ればネガティブ思考は次第に遠ざかってゆく。自分とは思考ではなく、行動なのだ。
 
 

■ひたすらに取り組む

 

1 成功はいつも不確実性から

 
過去、一番成功したときのことを想像して欲しい。そのときはきっと落ち着かない状態、言い方を変えるなら「安全圏」の外で努力していたのではないだろうか。成功は常に不快感と不確実性、リスクから生まれる。

何かを成し遂げようとすると、途端に周囲は足を引っ張り出す。なぜならそれは彼らなりの「あなた像」の型から外れた行動を取ったからだ。型から外れた行動は、あなたの世界だけではなく、周囲の世界をも引っかき回す。そのために抵抗が生まれる。

また意識的・無意識的な抵抗も生まれる。極端にネガティブな考えだったり、不安感だったり、道に迷ったような感覚かもしれない。こういうときにはひたすらに取り組むことだ。気分は一切関係ない。希望の光がすべて消えたそのとき、ひたすらに取り組む力は人を前進させる燃料となる。

たとえば「大富豪になんて無理だ」と言われたり、「45キロもやせるなんてできない」と心の中の声がささやいたりしてきたとき、道は2つある。1つ目はその言葉を受け入れて屈することだ。もう1つは耳を貸さない。すべての声をひたすらに拒み、自分を信じる。なぜなら未来は誰にもわからないからだ。
 
 

2 期待しない

 
人が不安と恐怖を抱くのは心の底に期待があるからだ。期待は現実とシナリオとの間に生じる。問題は常に期待にある。怒りを覚えたとき、その場面をよく見ると背後に期待があることがわかる。

人生をおかしくするのは問題ではない。隠れた期待なのである。人間は先を予測し、本能的にプランを立てたがる。しかし本当に予測することは不可能だ。だからまずは期待を手放し、目の前の物事に取り組むことだ。

ここまで来るとわかる。人は無意識に支配されており、人間が持つ本当の自由意志とは、棄てるべき悪癖をすべて棄て、やらねばならないことをすべて行うことしかないのだ。

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